diary

想像力と、自由でいること

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芝居をするとき、限られた情報と時間のなかで、想像を膨らませる。

それでも後からこうすればどうなっただろう、ああすることもできたかも、と悔しい思いをすることも多い。

最近思い出したことがある。

国語の授業で『くじらぐも』を習っていたから、小学校1年生のころだと思う。

先生が「空の絵を描いてみましょう」と言った。

私たちは画用紙に水色のクレヨンでもくもくとしたポップな雲を描いた。

描いてみるとなんとなく塗りつぶしてみたくなり、それだけの理由で水色の雲がいくつもできた。

みんなが一様にそんな調子だったので、先生は見かねて1人の男の子の絵を紹介した。

水色のクレヨンで薄く塗った画用紙の中に、白い雲が浮かんでいた。

自分を痛烈に恥じたのは私だけではなかったと思う。

先生から褒められた彼のことを、ふだんいじめていた男の子たちが、苦々しく見ているような気がした。

みんなは一斉に白い雲を描き足し、もとあった水色の雲は背景として塗りつぶされた。

空の色は必ずしも水色ではなく、紫や赤やオレンジの時もある。一面灰色の時もある。雲がない日だって、ある。

教室の中の出来事で頭がいっぱいになっている私たちより、彼の想像はずっと自由だったのだと思う。

彼はそのうちに転校してしまって、名前も思い出せない。

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